RACE REPORT
レースレポートグランツーリスモを使用するリーグとして、国内最高峰ともいえるJEGT。
さらに、そのなかでも頂点に位置するのがトップリーグだ。
トップリーグの高いレベルを維持するため、JEGTでは2023シリーズから下部カテゴリーであるチャレンジリーグとの入れ替え制度をスタート。
そして、2024シリーズでは、新たに「入れ替え戦」を設け、さらなるリーグの強化を図る。
2025年3月22日(日)に開催された、入れ替え戦の模様を詳しくお伝えしよう。
2024シリーズから導入された入れ替え戦は、ドライバー個人のスキルだけでなくチームの総合力が求められる。
JEGTのレギュラーシーズンでは1チーム1台のエントリーだが、F1のように1チーム2台のエントリーだ。
まずは、入れ替え戦のフォーマットについて、出場チームも含めて詳しくみていこう。
入れ替え戦に出場するのは、トップリーグの下位2チームとチャレンジリーグの上位2チームだ。
昨年は自動的に入れ替えだったが、今シーズンは対象チームの入れ替え戦によって、来季のトップリーグ参戦権を争う。
トップリーグ下位2チームにとっては、是が非でも残留したい負けられない戦いだろう。
一方のチャレンジリーグ上位2チームは、トップリーグ出場を目指してリーグ戦を戦っていただけにチャンスを掴み取りたいはずだ。
トップリーグ出場権獲得を目指すという点は4チームとも同じだが、メンタルの部分ではそれぞれの思惑が交錯する。
レギュラーシーズンとはまた違った、緊張感のあるレースに期待したい。
チーム名 | 2024シリーズリザルト | ドライバー | ドライバー |
NISSAN × TRUST RACING | トップリーグ9位 | #34 植木 俊輔 | #35 五木 隆太郎 |
日産サティオ佐賀 | トップリーグ10位 | #522 吉田 稜汰朗 | #523 寺島 信一朗 |
VERSUS e-motorsports team | チャレンジリーグ1位 | #194 谷藤 亮 | #195 坂原 優太 |
WEINS CLUB TEAM | チャレンジリーグ2位 | #102 市原 拓真 | #103 新木 悠真 |
入れ替え戦は、各チーム2台ずつの合計8台で争われる。
各ドライバーの順位を合計し、数字の少ないチームが上位という形だ。
例えば、2台のうち1台が1位、もう1台が8位だった場合、合計順位は9。
一方で、2台が2位、3位を獲得すれば合計順位は5となるため、最終結果は上位ということになる。
たとえ1位を獲得しても、チームメイトの順位が振るわなければ勝ち抜けられない可能性があるということだ。
トップリーグに参戦するには、チームの総合力が求められる。
速いドライバーが1人いたとしても、トップリーグのレベルにはなかなかついていけないだろう。
1チームあたり2台のエントリーで競う入れ替え戦のフォーマットによって、チームとしての実力が試される。
入れ替え戦の舞台に選ばれたのは、グランツーリスモオリジナルコースのレイク・マジョーレ・サーキットだ。
低速から高速までバリエーション豊かなコーナー、高低差40mのストレートなどドライバーの高い技術を要求するテクニカルコースといえるだろう。
レベルの高いシリーズを戦ってきただけあって、入れ替え戦に出場するチームの実力は拮抗している。
総合的なテクニックを試されるだけに、ドライバーとチームの実力を図るには最適なコースだ。
実力が拮抗した4チームによる争いは、予選から予想通りもつれる展開となった。
各チーム2台ずつの8台が出走しているにも関わらず、予選タイムのトップと8番手の差はわずか0.7秒。
決勝レースも各チームの意地がぶつかりあい、最後まで目の離せない攻防が続いた。
最初のアタックに挑んだのは、チャレンジリーグを2位で通過したWEINS CLUB TEAM。
#102の市原 拓真選手はコース幅いっぱいを使って攻め込み、いきなり1.52.988をマークした。
しかし、続いてアタックをした日産サティオ佐賀の#522吉田 稜汰朗選手が、1.52.962を叩き出してトップタイムを更新。
昨年トップリーグに昇格したチームとして、意地を感じる走りをみせた。
次にアタックをしたチャレンジリーグ1位通過のVERSUS e-motorsports teamの#194 谷藤 亮選手は、1.53.000で3番手。
最後に挑んだNISSAN × TRUST RACINGでは、チームナンバーを背負う#35 五木 隆太郎選手が5番手タイムの1.35.358を記録した。
全車がハードタイヤを選択してスタートをしたレース序盤は、順位変動のない落ち着いた展開。
しかし、各車はほぼテールトゥノーズで連なっているため、わずかなミスをきっかけにレースが動きそうな緊迫感が漂う。
膠着状態のまま迎えた4ラップ目、ついにレースが動く。
裏ストレート直後のヘアピンで、#194 谷藤選手(VERSUS e-motorsports team)が大きく姿勢を崩した隙をついて、#103新木 悠真選手(WEINS CLUB TEAM)がオーバーテイク。
WEINS CLUB TEAMが2番手、3番手ポジションを確保してレースの主導権を握る。
全車同じタイヤ戦略を取っていたため、このままゴールするかに思われたが、チームによるピットインタイミングの違いで順位が大きく動いた。
WEINS CLUB TEAM勢と#195 坂原 優太選手(VERSUS e-motorsports team)を除く5台が6周目にピットイン。
7周目に残りの3台がピット作業を終えたところで、2台が大きくポジションを失った。
#102 市原選手はポジションを維持したものの、#103 新木選手が6番手、#195 坂原選手が最後尾まで後退。
レースはこのまま順位は動かず、中段の順位が入れ替わるなか安定した走りをみせた#522 吉田選手(日産サティオ佐賀)がポールトゥウィン。
また、2位もスタートからポジションを守った#102 市原選手(WEINS CLUB TEAM)が入った。
結果、日産サティオ佐賀とWEINS CLUB TEAMが、同ポイントで来季のトップリーグ昇格を掴んだ。
ポジション | ゼッケン | チーム名 | ドライバー | タイム |
1 | 522 | 日産サティオ佐賀 | 吉田 稜汰朗 | 1:52.962 |
2 | 102 | WEINS CLUB TEAM | 市原 拓真 | 1:52.988 |
3 | 194 | VERSUS e-motorsports team | 谷藤 亮 | 1:53.000 |
4 | 103 | WEINS CLUB TEAM | 新木 悠真 | 1:53.035 |
5 | 35 | NISSAN × TRUST RACING | 五木 隆太郎 | 1:53.117 |
6 | 523 | 日産サティオ佐賀 | 寺島 信一朗 | 1:53.216 |
7 | 34 | NISSAN × TRUST RACING | 植木 俊輔 | 1:53.358 |
8 | 195 | VERSUS e-motorsports team | 坂原 優太 | 1:53.663 |
順位 | チーム名 | レース順位① | レース順位② | 順位合計 |
1 | 日産サティオ佐賀 | 1 | 7 | 8 |
2 | WEINS CLUB TEAM | 2 | 6 | 8 |
3 | NISSAN × TRUST RACING | 4 | 5 | 9 |
4 | VERSUS e-motorsports team | 3 | 8 | 11 |
チームの総合力をかけて争った入れ替え戦は、トップリーグの日産サティオ佐賀が残留、チャレンジリーグのWEINS CLUB TEAMが昇格という、いわば両リーグ痛み分けになった。
さらに結果を細かく見ていくと、敗退チームも含めて本当に紙一重の結果だったことがわかる。
レース順位4位、5位でフィニッシュしたNISSAN × TRUST RACINGと勝ち抜いたチームとの差はわずかポジション1つ。
また、結果的にチーム順位は4位に終わったVERSUS e-motorsports teamも、谷藤選手が3位になっていることを考えるとピットタイミング次第では十分昇格の可能性があっただろう。
結果を知っていても熱くなれるほど混戦模様だったレースの詳細は、ぜひJEGT公式YouTubeチャンネルでご覧いただきたい。
下位カテゴリーという位置づけのチャレンジリーグだが、トップリーグチームと互角に戦えるレベルにあることを証明した。
2025シーズンでは、トップリーグはもちろん、チャレンジリーグの行方にも大いに注目していただきたい。
Text:渡邉 篤
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