RACE REPORT

レースレポート
  • 2024.12.25
  • トップリーグ

【レースレポート】JEGT2024シリーズRd.2は天候を読み切った#8 ARTAが勝利

雨のレースを制した#8 ARTA

2024シリーズの開幕戦を終えたばかりのJEGTだが、早くも11月23日にRd.2が開催された。
予選結果からはRd.1に近い結果が予測されたが、天候に左右された決勝レースは波乱の展開。

戦略の妙、ドライビングテクニック、各チームの思惑と随所に見どころ満載のRd.2の模様を詳しくお伝えしよう。

昨年に続いて雨に見舞われたRd.2

雨の中でも果敢なバトルをみせる

2023シリーズでJEGT史上初めて設定された「天候の変化あり」だが、今シーズンもRd.2で取り入れられた。
予測不能な展開のなか、各チームの戦略やドライバーのスキルが試される。
まずは、Rd.2のレギュレーションを紹介しよう。

卓越した技術をもつトップリーグだからこその天候変化

天候変化を設定してもレースが破綻しないのは、トップリーグだからこそといえる。
ドライバーのスキルが十分でない場合、雨が降るとスピンやコースアウトばかりでレースにならないためだ。
また、コースアウトやガードレールに接触があっても走り続けられるグランツーリスモ7だと、途端にリアリティが失われてしまう。

しかし、卓越した技術でクルマをコントロールできるトップリーグであれば、雨はレースをさらに面白くしてくれる要素になりえる。
限界領域でのぎりぎりのバトル、チームによるピット戦略の違い、いつも以上にエキサイティングなレースになるだろう。

世界屈指の高速サーキット富士スピードウェイ

Rd.2の舞台は、世界屈指の高速サーキットとしても知られる富士スピードウェイ。
しかも、雨が降るということになれば、かなりスリリングな展開になるはずだ。

レギュレーション

使用コース 富士スピードウェイ
周回数 (ハイパースプリント)2周(決勝レース)12周
使用タイヤ (ハイパースプリント)レーシングソフト

(決勝レース)レーシングミディアム/ インターミディエイト/ レイン

タイヤ消耗倍率 (ハイパースプリント)0倍(決勝レース)5倍
燃料消費倍率 (ハイパースプリント)1倍(決勝レース)3倍

JEGT2024シリーズRd.2 トップリーグレースレポート

一時は後続に捉えられるも2位フィニッシュと健闘した#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS

今シーズンから採用したハイパースプリント、決勝レースともにこれぞトップリーグといえるエキサイティングな展開となった。
特に決勝レースでは、天候変化によるピット戦略で波乱の展開。
見ごたえのあったRd.2のレースを、たっぷりとご紹介しよう。
ただし、どのセッションも内容の濃い展開だったため、記事末にあるアーカイブ動画もぜひ併せてご覧いただきたい。

予選スーパーラップ

トップリーグの予選スーパーラップは、わずか0.5秒ほどのなかに7チームがひしめく大混戦となった。
1分37秒台のアタックが続くなか、5番手アタックの辻村 亮介選手(#8 ARTA)が1分36秒938のトップタイムをマーク。
しかし、続く上位勢が立て続けにタイムを更新する、見ごたえのある展開となった。
7番手アタックの森本 健太選手(#02 EVANGELION e-RACING×ウエインズトヨタ神奈川)が1分36秒915でトップに躍り出たものの、続く後藤 優介選手(#52 KANTOモータースクール SCARZ)がさらに0.1秒ベストタイムを更新。

そして、圧巻だったのは、最後にアタックをした佐藤 彰太選手(#1 Sengoku Gaming)だ。
セクタータイムを次々と塗り替えると、そのままトップタイムを0.237秒更新する1分36秒565でフィニッシュ。

ディフェンディングチャンピオンの実力をみせつけ、ポールポジションを獲得した。
2番手は後藤選手(#52 KANTOモータースクール SCARZ)、続く3番手は長 和樹選手(#12 KOSHIDO RACING Ⅻ)。

ハイパースプリント

ハイパースプリントのグループ分けは、スターティンググリッド順に以下のとおり。

グループA(3チーム) #1 Sengoku Gaming
#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS
#54 MAZDA SPIRIT RACING with TC CORSE
グループB(3チーム) #52 KANTOモータースクール SCARZ
#8 ARTA
#523 日産サティオ佐賀
グループC(4チーム) #12 KOSHIDO RACING Ⅻ
#02 EVANGELION e-RACING×ウエインズトヨタ神奈川
#105 SPK e-SPORT Racing with TC CORSE
#35 NISSAN × TRUST RACING

グループA

グループAは、スタート直後から手に汗握る接近戦が展開された。
マツダ RX-VISIONを使用する2番手スタートの岩田 和歩選手(#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS)と龍 翔太郎選手(#54 MAZDA SPIRIT RACING with TC CORSE)がスタートダッシュ。
ポールポジションスタートの奥本 博志選手(#1 Sengoku Gaming)は2番手に後退し、前後を挟まる形でオープニングラップを終える。
しかし、2ラップ目のホームストレートエンドでスリップストリームをうまく使ってトップを走る岩田選手に並ぶと、サイドバイサイドの展開からコカコーラコーナーで抜け出してポジションを奪い返した。

結局、奥本選手(#1 Sengoku Gaming)がトップチェッカー。
2番手に岩田選手(#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS)、3番手は龍 翔太郎選手(#54 MAZDA SPIRIT RACING with TC CORSE)という結果になった。

グループB

Rd.1でスタンディングスタートの強さをみせたNSXを使用する大石 澄海選手(#8 ARTA)が2番手からスタートするグループB。
戦前の予想通り、ポールポジションの佐々木 拓眞選手(#52 KANTOモータースクール SCARZ)をスタート直後にかわして大石選手がトップに立った。
大石選手が逃げる展開になるかと思われたが、後続の佐々木選手、吉田 稜汰朗選手(#523 日産サティオ佐賀)は徐々に差を詰めて3台がテールトゥノーズ。
レースが動いたのはオープニングラップの最終コーナーだった。
一瞬の隙を突いて大石選手のイン側にノーズをねじ込んだ佐々木選手が見事にオーバーテイク。

レースはそのまま佐々木選手(#52 KANTOモータースクール SCARZ)がトップでフィニッシュをして結果的にポールトゥウインを決めた。
2番手は大石選手(#8 ARTA)、3番手は吉田選手(#523 日産サティオ佐賀)。

グループC

4番手フィニッシュだとノーポイントとなるグループCは、激しい後続争いに注目が集まった。
NSXを使用する⿊畑 蓉選手(#12 KOSHIDO RACING Ⅻ)が見事なスタートダッシュで逃げる展開。
一方の後続では、スタート直後に3番手に後退した鷲尾 拓未選手(#02 EVANGELION e-RACING×ウエインズトヨタ神奈川)がダンロップシケインの飛び込みでポジションを奪い返えす。
さらに、2ラップ目のホームストレートエンドでは、4番手の角間 光起選手(#35 NISSAN × TRUST RACING)が前をいく深谷 諄選手(#105 SPK e-SPORT Racing with TC CORSE)に並ぶ激しい3番手争い。

結局、ポールポジションからスタートダッシュを決めた⿊畑選手(#12 KOSHIDO RACING Ⅻ)が先頭でフィニッシュ。
2番手には鷲尾選手(#02 EVANGELION e-RACING×ウエインズトヨタ神奈川)、3番手に深谷選手(#105 SPK e-SPORT Racing with TC CORSE)という結果となった。

決勝レース

決勝レースは、今にも降り出しそうな重々しい空模様のなかでスタートを迎えた。
最後尾スタートの植木 俊輔選手(#35 NISSAN × TRUST RACING)が勝負をかけてインターミディエイトタイヤを選択したほかは、全チームがミディアムタイヤを選択。
スタート後の天候変化と、各チームのピット戦略に注目が集まる。

予想に反して雨が落ちてこないなか、大きな順位変動はないまま周回数を重ねていく各チーム。
レースが動いたのは、一気に雨脚が強くなった4ラップ目の終盤だった。

トップを走る今村 駿佑選手(#1 Sengoku Gaming)を皮切りに、各チームがインターミディエイトタイヤへの交換のために相次いでピットイン。
しかし、4番手を走行していた杉守 翔平選手(#8 ARTA)と堤口 直斗選手(#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS)は、レーシングミディアムタイヤのままステイアウトという驚きの戦略をみせる。
ステイアウトを選択した両チームのワンツー体制になったものの、土砂降りのなかでコースにとどまるだけで精一杯という状況。

一方でインターミディエイト勢はペースを上げて追い上げをみせる。
まず、2番手を走行していた堤口選手が6ラップ目のホームストレートで後続車両に捕まると、トップを走る杉守選手もダンロップシケイン手前で次々とオーバーテイクを許してしまう。
戦略としては、インターミディエイトへのタイヤ交換が正解だったかと思われた。
ところがレース後半では晴れ間が見え始め、みるみる路面が乾いていく。
トップを走っていた今村選手をはじめ、ドライ路面ではペースが上がらないインターミディエイトに交換したチームは再度ピットインを余儀なくされた。

結果的にドライ路面でペースを取り戻した杉守選手(#8 ARTA)が再度トップに立ち、ポジションをキープして劇的なトップチェッカー。
さらに、同じくミディアムタイヤで踏みとどまった堤口選手(#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS)が6番手スタートから4ポジションアップという見事な走りで2位フィニッシュを決めた。
3位は、エース宮園 拓真選手を立てながら天候に振り回された#52 KANTOモータースクール SCARZ。

高い実力に裏打ちされたピット戦略で勝利を掴んだ

優勝インタビューに答える杉守 翔平選手(#8 ARTA)

今回のレース結果だけをみると、ギャンブル的ピット戦略が当たったと思うかも知れない。
しかし、あれだけの雨のなか、ドライタイヤのままレーススピードでコースに留まるのは容易なことではない。
事前の徹底したシミュレーションと練習、高いドライビングスキルがあったからこそ勝利を手繰り寄せたのだろう。
優勝インタビューに答えた杉守 翔平選手(#8 ARTA)は、「濡れた路面をドライタイヤで走る練習をしていた」と明かした。

また、同じくステイアウトの戦略で2位フィニッシュの#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDSも、チームにとってもシリーズ争いでも大きな結果を掴んだ。
開幕戦の終了時点では、入れ替え基準となるポイントランキング9位の#105 SPK e-SPORT Racing with TC CORSEとわずか4ポイント差だったためだ。
今回の結果を受けて、シリーズポイントを一気に27ポイントまで伸ばした。
最終戦の結果次第では上位も十分に狙える位置につけているだけに、上位陣にとっても気になる存在だろう。

JEGT2024シリーズは、早くも残すところ1戦のみ。
2025年1月12日(日)に開催される、東京オートサロン2025内でのオフラインレースのみとなった。
JEGT公式YouTubeチャンネルで生中継されるほか、当然会場での生観戦もできる。
日程的に連休中ということもあるため、遠方の方もぜひ一度トップリーグの熱いバトルを直接見ていただきたい。

Text: 渡邉 篤

雨中のエキサイティングなレースとなったJEGT2024シリーズRd.2

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