RACE REPORT
レースレポート東京オートサロン2023(2023年1月14日)のイベントホールにて、シリーズの締めくくりとして開催されたJEGT2022 トップリーグRd.3。
今シーズン唯一オフラインで開催され、会場には多くのファンが詰めかける中、シリーズチャンピオンのかかる大一番とあってスタート前から期待と緊張が会場全体に広がる。
波乱の展開となった最終戦の模様を、改めて詳しくお伝えしよう。
なお、レースの模様を会場から届けるのは、実況に鈴木学氏、ゲスト解説にレーシングドライバーの谷口信輝氏と西澤健太氏、司会Alee氏とアシスタント沢すみれさんというお馴染みのメンバー。
さらに、スペシャルゲストにトップストリーマーのSPYGEA氏と関優太氏の両名を迎え、最終戦にふさわしい豪華陣容で大会を盛り上げた。
Rd.3の注目ポイントは、オフライン開催ならではのドライバー交代だ。
また、ソフト/ミディアム/ハードの3種類のタイヤの使用義務があるだけに、各チームのタイヤ戦略も気になるところだ。
JEGT2022シリーズトップリーグRd.3のレギュレーションを、大会使用コースの富士スピードウェイとあわせて紹介しよう。
大会使用コースは、決勝レース開催に先立っておこなわれた予選スーパーラップと同じ富士スピードウェイ。
世界屈指の高速コースとして知られる富士スピードウェイは、後半には繊細なアクセルワークと的確なライン取りが求められるテクニカルセクションもあり、マシンパワーだけではなくドライバーの腕も求められる。
全長約1.5kmに及ぶホームストレートでのスリップストリームからのオーバーテイク、後半のテクニカルセクションでのラインの奪い合いなどトップレベルのバトルに期待したい。
また、JEGT開催史上初めて、風向きを制御するイコールコンディションモードがオフとなっているのも注目ポイントだ。
レース中も風向きと強さが変わるため、方向によっては長いホームストレートで影響を受ける可能性がある。
実施形式 | オフライン形式 |
使用ソフトウェア | グランツーリスモ7 |
使用コース | 富士スピードウェイ |
決勝周回数 | 24周 |
タイヤ摩耗 | 4倍 |
燃料消費 | 2倍 |
使用可能タイヤ | レーシングソフト/ レーシングミディアム/ レーシングハード ※すべてのタイヤに使用義務あり |
義務ピットイン及びドライバー交代 | 2回の義務ピットイン/ 3名のドライバーがそれぞれ6周以上走行義務 |
オフライン開催ならではのレギュレーションとして、Rd.3ではドライバー交代に対するレギュレーションが設けられている。
レギュレーション違反にはペナルティが課される一方、タイムを縮められるチャンスでもあるため、すべてのチームが本番前にドライバー交代の練習を行っていたのが印象的だ。
1.ドライバー交代申請 | 事務局スタッフにドライバー交代の申請をおこなう |
2.次走者スタンバイ | 現ドライバーが交代位置に到達するまで待機 |
3.ドライバー交代 | マシンがピットに完全停止後、交代ラインに向かう |
4.タイヤ交換/ 燃料補給 | 次走者が操作をおこなう |
5.レース復帰 |
最終戦となるRd.3は、予選スーパーラップで#888 SengokuGamingが今シーズン初のポールポジションを獲得する一方、ポイントラインキングトップの#01 EVANGELION e-RACING with 広島マツダがまさかの5番手に沈むなど、決勝はレース前から波乱の展開を見せていた。
Rd.3開始時点では、ポイントランキング7位のeM福岡 エンタテ!区 LEGENDSまでシーズンチャンピオンの可能性があり、どのチームも譲れないレースとなる。
レースはスタート直後から激しいポジション争いが繰り広げられるた。
特に、上位陣は軒並みスタートでソフトタイヤを選択するなか、ミディアムタイヤを選択した2番手スタートの#55 滝田選手(ARTA)に各チームが襲いかかる。
まずは、#777 森本選手(D’station Racing)がスタート直後の1コーナーで仕掛けてテールトゥノーズに持ち込むと、100R後のヘアピンで2番手にポジションアップ。
さらに、最終コーナーでは#01 宮園選手(EVANGELION e-RACING with 広島マツダ)と#105 菅原選手(TC CORSE SPK e-SPORT Racing)が#55 滝田選手に並び、ホームストレートでスリーワイドという序盤から手に汗握る展開となった。
一方、この2番手争いに乗じて#888 今村選手(SengokuGaming)は、後続との差を徐々に広げ始める。
レースが6周目に突入すると、ハードタイヤを選択していた下位チームがピットインの動きを見せ始めると、ステージ上に交代ドライバーがスタンバイし、今レース初のドライバー交代に注目が集まる。
6周目の終わりに、#54 龍選手(TC CORSE Esports MAZDA)をはじめとしたハードタイヤスタートのチームが相次いでピットイン。
どのチームも問題なく1回目のピット作業を終える。
レース中盤となる8周目を前に上位陣の交代ドライバーがステージに上がり始め、いよいよ上位陣も1回目のピットインを迎える。
当初、ソフトタイヤは12周程度もつ予想だったが、レース序盤で激しいポジション争いがあったこともあり、タイミングが少し早くなったようだ。
トップを走行する#888 今村選手から4位の#01 宮園選手までが続けてピットに入る。
ドライバー交代も含めて、ピット作業を終えると#01 鈴木選手(EVANGELION e-RACING with)は見かけ上4番手、実質2番手に浮上。
しかし、ここで突如ステージ前に用意された#01 EVANGELION e-RACING with 広島マツダのピットが慌ただしくなる。
本来、規定周回数である6周以上走行しなければならないにも関わらず、第3出走者の#01 山中選手がすぐステージ上にあがって交代の待機をするなど混乱。
レース中に正確な情報はわからなかったが、#01 鈴木選手がドライバー交代時にボタン操作のミスによりタイヤ交換をしていなかったのだ。
#01鈴木選手はタイヤ交換のため、翌周で再度ピットインを余儀なくされ最後尾まで大きくポジションを落としてしまう。
ポイントランキングトップの#01 EVANGELION e-RACING with 広島マツダが、事実上チャンピオンシップ争いから脱落。
これにより、上位陣は優勝すればシリーズチャンピオンという緊迫した展開となる。
各チーム異なる作戦をとったものの、第2出走者へ交代時はそれぞれ前がクリアな状態でコースへ復帰しており、レース中盤は大きな順位変動は起こらないままレースの行方は第3出走者に委ねられた。
各チーム作戦に違いはありつつも、14周目の#777 久万田選手(D’station Racing)を皮切りに、最終出走者へ交代するピットインが始まる。
トップを快走する#888 奥本選手はピット作業で#888 川上選手に交代後もポジションは変わらず独走状態。
一方で、2番手以下は第3走者へのドライバー交代が終わった19周目あたりからかなりもつれる展開となる。
まず白熱していたのは、3番手争い。
ハードタイヤで先行する#55 古畑選手を、ミディアムタイヤの#777 高橋選手とソフトタイヤの#54 加藤選手が相次いでパス。
#54 加藤選手はそのまま粘る#777 高橋選手を追い詰めると、コカコーラコーナーでかわし3番手に浮上した。
ハードタイヤで2番手を走る#105 深谷選手に、タイヤ差で勝る#54 加藤選手が周回を重ねながら徐々に追いつき、ついに22周目の最終コーナーでイン側からオーバーテイク。
トップはほぼ#888 川上選手という可能性が高まるなか、表彰台の獲得に照準を絞った3番手争いは最終ラップまで激しいバトルがみられた。
最終ラップに突入したホームストレートで、#105 深谷選手と#777 高橋選手がテールトゥノーズ。
ハードタイヤを使用する#105 深谷選手が再三の仕掛けに対してなんとかポジションを死守していたものの、最終コーナーの立ち上がりで#777 高橋選手が見事にオーバーテイクを決め、3番手に浮上する。
見かけ上の順位は、レーススタートから独走体制を築き上げた#888 川上選手(SengokuGaming)がトップチェッカー。
2位には最終走者で順位を上げた#54 加藤選手(TC CORSE Esports MAZDA)、3位はファイナルラップの最終ストレートでポジションを奪った#777 高橋選手(D’station Racing)が滑り込んだ。
ただし、今回はオフラインレースということで、コース上以外でのペナルティの可能性もある。
最終順位の決定は、審議の結果を待ちたい。
審議の結果、トップ以外はペナルティによって大きく順位が入れ替わる結果となった。
ノーペナルティだった#888 SengokuGamingが、ポールトゥウィン。
同時に、20pt差を逆転し、JEGT2022シリーズトップリーグを制した。
同じくペナルティのなかった#54 TC CORSE SPK e-SPORT Racingが繰り上げで2位。
#54 TC CORSE Esports MAZDAが3位となった。
Rd.3の結果と、シリーズポイントランキングの結果は以下の通り。
Pos | Num | Team | Driver | Time | Gap |
1st | 888 | Sengoku Gaming | 今村 駿佑 奥本 博志 川上 奏 |
39:56.985 | – |
2nd | 105 | TC CORSE SPK e-SPORT Racing | 菅原 達也 鍋谷 奏輝 深谷 諄 |
40:09.139 | +12.154 |
3rd | 54 | TC CORSE Esports MAZDA | 龍 翔太郎 佐々木 唯人 加藤 達彦 |
40:11.689 (+6.000) |
+14.704 |
4th | 55 | ARTA | 滝田 歩夢 杉守 翔平 古畑 貴彬 |
40:17.755 (+3.000) |
+20.770 |
5th | 12 | KOSHIDO RACING | ⿊畑 蓉 山本 英弥 長 和樹 |
40:22.993 (+8.000) |
+26.008 |
6th | 777 | D’station Racing | 森本 健太 久万田 崚 高橋 拓也 |
40:24.104 (+15.000) |
+27.119 |
7th | 127 | eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS | 岩田 和歩 國分 諒汰 荒木 祐樹 |
40:38.692 (+9.000) |
+41.707 |
8th | 35 | NISSAN × TRUST RACING | 小木田 恭悟 植木 俊輔 五木 隆太郎 |
40:45.037 (+13.000) | +48.052 |
9th | 11 | KOSHIDO Jr.RACING | 柏倉 和弥 今井 慶春 佐久間 俊一 |
40:50.603 (+10.000) | +53.618 |
10th | 01 | EVANGELION e-RACING with 広島マツダ | 宮園 拓真 鈴木 聖弥 山中 智瑛 |
40:59.599 (+30.000) | +1:02.614 |
※()内の数字はペナルティの秒数
#01
・1回目ピット 手順違反
#11
・2回目ピット 手順違反
・トラックリミット違反
・ピットレーン ホワイトラインカット
#12
・1回目ピット 手順違反
・2回目ピット 手順違反
#35
・ピットレーン ホワイトラインカット
・1回目ピット 手順違反
・2回目ピット 手順違反
#54
・1回目ピット 手順違反
・2回目ピット 手順違反
#55
・ピットレーン ホワイトラインカット
#127
・ピットレーン ホワイトラインカット× 2回
#777
・ピットレーン ホワイトラインカット × 2回
・コーナー中、後続車へ衝突狙いの減速・幅寄せ(L20 ストレート #54に対して)
・1回目ピット 手順違反
・2回目ピット 手順違反
ランキング | No. | チーム名/ドライバー | 獲得ポイント |
1st | #888 | Sengoku Gaming 川上 奏/奥本 博志/今村 駿佑/井芹 颯真 |
66pt |
2nd | #54 | TC CORSE Esports MAZDA 佐々木 唯人/坪井 俊介/加藤 達彦/龍 翔太郎/三宅 陽大 |
53pt |
3rd | #01 | EVANGELION e-RACING with 広島マツダ 宮園 拓真/山中 智瑛/鈴木 聖弥/草野 貴哉 |
52pt |
4th | #55 | ARTA 滝田 歩夢/杉守 翔平/古畑 貴彬/赤羽 佑互 |
52pt |
5th | #105 | TC CORSE SPK e-SPORT Racing 深谷 諄/菅原 達也/鍋谷 奏輝/佐藤 陽向 |
49pt |
6th | #777 | D’station Racing 野島 俊哉/高橋 拓也/森本 健太/久万田 崚/辻村 亮介 |
45pt |
7th | #127 | eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS 堤口 直斗/古屋 公暉/荒木 祐樹/鈴木 彰馬/國分 諒汰/岩田 和歩/瀬田 凛 |
23pt |
8th | #12 | KOSHIDO RACING ⿊畑 蓉/長 和樹/植野 冬夷/山本 英弥 |
20pt |
9th | #35 | NISSAN × TRUST RACING 小木田 恭悟/植木 俊輔/池内 比悠/五木 隆太郎 |
11pt |
10th | #11 | KOSHIDO Jr. RACING 柏倉 和弥/北村 拓也/佐久間 俊一/今井 慶春 |
5pt |
JEGT2022シリーズトップリーグは、Rd.3で圧倒的な速さと堅実なルール遵守をみせた#888 SengokuGamingが大逆転でチャンピオンに輝き幕を閉じた。
一方で、圧倒的優位に立っていた#01 EVANGELION e-RACING with 広島マツダだったが、ピット作業時のまさかの操作ミスでシリーズチャンピオン争いから脱落。
ほかにも多くのチームにペナルティが課せられるなど、不確定要素が多いと言われるオフラインレースの怖さをまざまざと見せつけられる結果となった。
JEGT2022シリーズは、今戦で終了となる。
シーズン開幕前は、昨年のチャンピオン獲得の原動力となったダブルエースに加えてゴールデンルーキーという盤石の体制を敷いた#01 EVANGELION e-RACING with 広島マツダが圧倒的有利かに思われた。
しかし、Rd.2では#55 ARTA、Rd.3では#888 SengokuGamingがそれぞれ初優勝を飾るなど、結果的に3戦とも優勝チームが異なる結果からもわかるように、JEGTトップリーグに参戦する実力差は極めて小さい。
世界戦経験者も多く参加する国内最高峰eモータースポーツリーグであるJEGTでは、ほんのわずかなミスが結果に大きく影響する。
つまり、今シーズン下位に沈んだチームも含めて、来シーズンはどういった結果になるかは誰にも予想できない。
さらに、ドラフトによるチーム編成の変更や、JDSで新たに認定されるルーキードライバーの加入など今シーズンとは異なる体制になる可能性もある。
来シーズンは各チームがどんな体制でどんなレースを見せてくれるのか、今から開幕を楽しみに待ちたい。
Text: 渡邉 篤
■【大会情報】JEGT 2022シリーズ ROUND.3(東京オートサロン大会)※開催済み
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