RACE REPORT
レースレポートText:渡邉 篤
2022年9月11日(日)、今シーズンからJEGTシリーズとして新たに追加された企業対抗戦が、トップリーグの開幕に先駆けて行われた。
初開催の企業対抗戦は、JEGT認定ドライバー以外も参加可能なためドライバーの実力はトップリーグよりも幅広くなる。
しかし、実力差を感じさせないアグレッシブな走りを展開し、熱いレースを繰り広げてくれた。
なお、実況には鈴木学氏、解説陣にはプロレーシングドライバーの谷口信輝氏と新たにJEGT認定ドライバーの太田健氏を起用。
さらに司会進行はスポーツDJのAlee氏とアシスタントにレースクイーンの沢すみれさんを迎え、企業対抗戦もトップリーグと同様の実況体制で配信された。
企業対抗戦の使用コースとレギュレーションは、トップリーグと全く同様のものが採用された。ただし、チーム構成ルールはトップリーグとは大きく異なる。
企業対抗戦ではチームメンバーの実力差が大きい分、どの選手をどのセッションで起用するのかといったチーム戦略にも注目したい。
企業対抗戦のチーム編成には、社外のJEGT認定ドライバーは最大2名まで(最低1名必須)に制限され、社員ドライバーの参加が必須だ。
また、1レースに出場できる社外JEGT認定ドライバーは1名までなので、社員ドライバー2名(または認定ドライバーではない社外ドライバーも1名まで可)の参加が必要となるため幅広い層の参加が見込まれる。
実力差の少ない認定ドライバーのみで構成されるトップリーグと異なり、企業対抗戦では実力差のある選手が同一のレースを走ることとなり、レース展開が予測しにくいことも見どころの1つだ。
なお、JEGT認定ドライバーを半年以上の勤務実績がある社員として抱えているチームは、全てのメンバーをJEGT認定ドライバーで構成することも可能となっている。
開幕戦は、世界中のドライバーから愛されている鈴鹿サーキットで開催された。
S字コーナーをはじめ18箇所ものコーナーで構成され、世界屈指のテクニカルでエキサイティングなコースと評される。
一方で全開率も高くマシンパワーも要求されるため、ドライビングテクニックだけではなくマシン特性をいかしたレース運びも重要な攻略ポイントとなる。
レースは予選スーパーラップ、決勝ヒート1、決勝ヒート2という3つのセクションが設けられ、チームメンバー3名がそれぞれのセッションを担当する。
セッションごとに求められる能力は異なるうえ、チームメンバーの実力差が大きいという企業対抗戦ならではの事情があるため、各チームは慎重に人選をしたいところだ。
実施形式 | オンライン形式 |
使用コース | 鈴鹿サーキット |
予選形式 | スーパーラップ形式(アウトラップ1周/アタックラップ1周) ※審議制度あり |
決勝周回数 | 【ヒート1】5周 【ヒート2】10周 |
タイヤの消耗 | 【ヒート1】3倍 【ヒート2】1倍 |
燃料の消耗 | 【ヒート1】4倍 【ヒート2】2倍 |
使用可能タイヤ | 【予選】レーシングハード 【ヒート1】レーシングハード 【ヒート2】レーシングハード(使用義務あり)/レーシングミディアム |
今シーズン初開催となる企業対抗戦の先陣を切ったのは、JEGT認定ドライバーではない社員ドライバーの#8 福室選手(AUTOBACS)。
しかも、企業対抗戦はトップリーグより先に開催されたため、JEGT2022年シリーズ全体として記念すべきオープニングラップを飾ることとなった。
実況陣も含めて独特の緊張感に包まれたアウトラップを終えると、#8 福室選手は驚異的なアタックをみせる。どのコーナーもスムーズにクリアし、いきなり2分台を切る1:59.290を記録。
後続にプレッシャーを与えるターゲットタイムとなった。
後続選手が2分台のタイムを記録するなか、4番目のアタックとなった#103 甲斐選手(GRTRESSA×AIRBUSTER RACING)が、全セクターでベストタイムを重ね1:59.218をマークし初開催の企業対抗戦を盛り上げる。
トップ出走でファステストラップを記録していた#8 福室選手をわずか100分の7秒上回った。
予選スーパラップの結果は、なんとトップ2がJEGT認定ドライバーではないという波乱の結果となった。
1番手は#103 甲斐選手、緊張のトップ出走ながら好タイムを記録した#8 福室選手は惜しくも2番手。
3番手に#87 中井選手(HKS e-MotorSport)がJEGT認定ドライバーの意地をみせて滑り込んだ。
なお、#23 奥崎選手(NISSAN × TRUST Racing Jr.)と#571 大原選手(Team EMC x sti)がレース後の審議によりノータイムとなっている。
Pos | Num | Team | Driver | Time | Gap |
PP | #103 | GRTRESSA×AIRBUSTER RACING | 甲斐 陽翔 | 1:59.218 | – |
2nd | #8 | AUTOBACS | 福室 力 | 1:59.290 | +0.072 |
3rd | #87 | HKS e-MotorSport | 中井 宏彰 | 1:59.862 | +0.644 |
4th | #557 | Team G-7AUTOSERVICE | 河崎 峰 | 2:01.407 | +2.189 |
5th | #84 | TOMEI POWERED | 山中 真生 | 2:01:941 | +2.723 |
6th | #90 | WEB OPTION RACING | 鍵市 篤史 | 2:02.257 | +3.039 |
7th | #23 | NISSAN × TRUST Racing Jr. | 奥崎 玲 | No Time | – |
8th | #571 | Team EMC x sti | 大原 悠暉 | No Time | – |
レースはオープニングラップから順位変動が起こる激しい展開。
まず、スタート直後の1コーナーで4番手スタートの#557 大西選手(Team G-7AUTOSERVICE)がコースアウトし最下位まで順位を落としてしまう。
さらに最終シケインでは3番手スタートの#87 尾田選手(HKS e-MotorSport)がフロントロースタートの#8 上野選手(AUTOBACS)のイン側に思い切って飛び込み、見事なオーバーテイクを決めた。
順位変動の激しい決勝ヒート1のなかでも、際立っていたのが#571 松本選手(Team EMC x sti)と#90 冨永選手(WEB OPTION RACING)の猛追劇だ。
予選ノータイムで最後尾スタートとなった#571 松本選手は、5周という短いレースを意識して早めの勝負を仕掛け、2ラップ目には5番手に浮上。
さらに上位を追い上げる展開に持ち込んだ。
また、6番手スタートの#90 冨永選手も、ポジションを2つ上げて迎えた3ラップ目の130Rで見事なオーバーテイクを披露。
先行する#8 上野選手のイン側をついてサイドバイサイドになると、そのままの勢いで3番手に浮上した。
そして、猛プッシュで上位を追い上げていた#571 松本選手がついに最終ラップで#8 上野選手を捉える。
テールトゥノーズでプレッシャーをかけ続けられた#8 上野選手は、焦りからかヘアピンの立ち上がりで痛恨のスピン喫し、#571 松本選手が4番手に浮上した。
レース結果は、波乱のレースのなか終始安定していた#103 橋本選手(GRTRESSA×AIRBUSTER RACING)がトップチェッカー。
オープニングラップでポジションを1つ上げた#87 尾田選手(HKS e-MotorSport)がそのまま入って2番手。
3番手は#90 冨永選手(WEB OPTION RACING)、そして最後尾スタートから追い上げた#571 松本選手(Team EMC x sti)が4番手となった。
なおレース後の審議により、#8 上野選手(AUTOBACS)と#571 松本選手(Team EMC x sti)にそれぞれペナルティが課せられたものの順位への影響はなし。
Pos | Num | Team | Driver | Time | Gap |
1st | #103 | GRTRESSA×AIRBUSTER RACING | 橋本 理 | 10:08.053 | – |
2nd | #87 | HKS e-MotorSport | 尾田 結都 | 10:10.601 | +2.548 |
3rd | #90 | WEB OPTION RACING | 冨永 悠太 | 10:17.277 | +9.224 |
4th | #571 | Team EMC x sti | 松本 優一郎 | 10:22.829 | +14.776 |
5th | #23 | NISSAN × TRUST Racing Jr. | 長原 叶志郎 | 10:23.948 | +15.895 |
6th | #84 | TOMEI POWERED | 岩本 智樹 | 10:26.920 | +18.867 |
7th | #8 | AUTOBACS | 上野 哲 | 10:40.821 | +32.768 |
8th | #557 | Team G-7AUTOSERVICE | 大西 隆生 | 10:47.723 | +39.670 |
記念すべき企業対抗戦初の優勝者を決定する決勝ヒート2は、数々のオーバーテイクシーンとともに、最終的にペナルティが勝敗を分ける結果となった。
決勝ヒート2では、ミディアムタイヤの使用が可能だがハードタイヤの使用義務が課せられている。
ほとんどのチームがノーピットで走り切れるハードタイヤを選択するなか、唯一ミディアムタイヤを選択したのが#90 宮部選手(WEB OPTION RACING)。
1チームだけ異なるピット戦略がレース結果にどんな影響をもたらすのかにも注目が集まる。
レースは、スタート直後の1コーナーで3番手スタートの#90 宮部選手がいきなりコースオフ。
最低1回のピットストップを余儀なくされる#90 宮部選手としては、早い段階で上位陣をパスして、ミディアムタイヤの高いグリップ力でマージンを築きたいところだったが痛恨のミスとなってしまう。
2ラップ目に入るとトップ争いがヒートアップ。
ポールポジションスタートの#103 鷲尾選手(GRTRESSA×AIRBUSTER RACING)に対して、#87 尾形選手(HKS e-MotorSport)が徐々にその差を縮めて2台はテールトゥノーズのバトルに突入した。
再三仕掛けるものの決定打にかけていた#87 尾形選手は、4ラップ目のスプーン入口で一瞬イン側が開いた隙を見逃さずやや強引に#103 鷲尾選手をオーバーテイク。
#103 鷲尾選手は押し出された格好になり、守り続けていたトップの座を明け渡してしまう。
一方で、トップグループが熾烈なバトルでややタイムを落としている間にその差を縮めていたのが、#571 大石選手(Team EMC x sti)と#90 宮部選手だ。
トップが入れ替わったタイミング後のバックストレートでは、#571 大石選手が2位#103 鷲尾選手までわずか0.6差まで迫っていた。
スタートで順位を落としてしまった#90 宮部選手だったが、徐々にポジションを取り戻す。
5ラップ目には1コーナーでスリップストリームからイン側に飛び込んで3番手に浮上すると、バックストレートでは#103 鷲尾選手を捉えて2番手までポジションを上げた。
ただし、#90 宮部選手は使用義務のあるハードタイヤへの交換が必要なため、残念ながらあくまでも見かけ上の順位となる。
レースは2ラップ目でトップに立った#87 尾形選手が、9ラップ目に見かけ上のトップをミディアムタイヤの#90 宮部選手に譲るものの、ハードタイヤで1分59秒台を連発して独走体制を築く。
レースは、このままトップ#87 尾形選手、2番手#103 鷲尾選手、3番手#571 大石選手の体制でチェッカーフラッグが振られた。
しかし、レース後に行われた審議の結果、8チーム中5チームがペナルティを受けることとなり、最終順位は大きく変動。
審議の結果トップ2台にペナルティタイムが課せられ、最後まで猛追をみせた#571 大石選手(Team EMC x sti)が逆転で企業対抗戦初めての優勝を飾った。
独走体制を築いたものの、4ラップ目の強引なオーバーテイクでペナルティを貰ってしまい、#87 尾形選手(HKS e-MotorSport)は2位。
3位は同じくペナルティに泣いた#103 鷲尾選手(GRTRESSA×AIRBUSTER RACING)となった。
Pos | Num | Team | Driver | Time | Gap |
1st | #571 | Team EMC x sti | 大石 澄海 | 20:12.919 | – |
2nd | #87 | HKS e-MotorSport | 尾形 莉欧 | 20:13.717 | +0.798 |
3rd | #103 | GRTRESSA×AIRBUSTER RACING | 鷲尾 拓未 | 20:15.518 | +2.599 |
4th | #23 | NISSAN × TRUST Racing Jr. | 新川 真也 | 20:24.334 | +11.415 |
5th | #557 | Team G-7AUTOSERVICE | 鎌田 智暉 | 20:25.171 | +12.252 |
6th | #8 | AUTOBACS | 今里 駿斗 | 20:27.313 | +14.394 |
7th | #84 | TOMEI POWERED | 上野 柊斗 | 20:27.478 | +14.559 |
8th | #90 | WEB OPTION RACING | 宮部 和哉 | 20:34.223 | +21.304 |
国内最高峰リーグとして公正なレース運営を目指すJEGTでは、ルールの遵守は重要視していることの1つだ。
eモータースポーツでは接触やコースアウトがあっても、実車のように走行にかかわるダメージを受けないため、実車以上に厳しい裁定が下されることもある。
優勝した#571 Team EMC x stiは、予選スーパーラップでこそノータイムとなったものの、その後はクリーンなレース展開で見事に初優勝を飾った。
トップチーム、トップドライバーになるにはレーススピードだけではなく、ペナルティをもらわない的確なレースマネジメント能力も必要だ。
なお、JEGT企業対抗戦は10月14日(金)までエントリー可能となっており、少しでも興味のある企業関係者はエントリーを検討してみてはいかがだろうか。
企業対抗戦の第2戦は、2022年12月3日(土)開催予定。
初戦の結果を踏まえて、各チームがどのようなペナルティ対策でレースに臨むのかにも注目したい。
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