RACE REPORT
レースレポートText:渡邉 篤
国内最大級の規模で開催されるJEGTの2022年シーズンが、2022年9月11日(日)に開幕。
今シーズンは、2021年に行われた団体戦のランキング上位10チームで構成される「トップリーグ」と、法人格を持つ企業であれば参戦できる「企業対抗戦」という2つのカテゴリーで開催された。
白熱するレースを余すことなく視聴者に伝える中継陣は、実況に鈴木学氏、ゲスト解説にレーシングドライバーの谷口信輝氏に加え、新たにJEGT認定ドライバーの太田健氏を起用。
さらに、司会進行はスポーツDJのAlee氏、アシスタントにレースクイーンの沢すみれさんという豪華メンバーを迎えて中継された。
2022年のJEGT開幕戦の舞台として選ばれたのは鈴鹿サーキット。
チームメンバー3名それぞれの実力が試される今回のレース開催方式も含めて、開幕戦のレースレギュレーションをご紹介する。
開幕戦は、世界中のドライバーから愛されている鈴鹿サーキットで開催された。
S字コーナーをはじめ18箇所ものコーナーで構成され、世界屈指のテクニカルでエキサイティングなコースと評される。
一方で全開率も高くマシンパワーも要求されるため、ドライビングテクニックだけではなくマシン特性をいかしたレース運びも重要な攻略ポイントとなる。
レースは予選スーパーラップ、決勝ヒート1、決勝ヒート2という3つのセクションが設けられ、チームメンバー3名がそれぞれのセッションを担当する。
1本にかける集中力が要求され、決勝ヒート1のグリッドを決定する予選スーパーラップ。
5周という比較的短いレースのなかで結果を出さなければならず、決勝ヒート2のグリッド順を決める決勝ヒート1。
最後にバトンを受け継ぎ、10周という長丁場でチームの最終順位を担う決勝ヒート2。
それぞれ求められる能力が異なるセッションに、どのドライバーを配置するかというチーム戦略にも注目だ。
実施形式 | オンライン形式 |
使用コース | 鈴鹿サーキット |
予選形式 | スーパーラップ形式(アウトラップ1周/アタックラップ1周) ※審議制度あり |
決勝周回数 | 【ヒート1】5周 【ヒート2】10周 |
タイヤの消耗 | 【ヒート1】3倍 【ヒート2】1倍 |
燃料の消耗 | 【ヒート1】4倍 【ヒート2】2倍 |
使用可能タイヤ | 【予選】レーシングハード 【ヒート1】レーシングハード 【ヒート2】レーシングハード(使用義務あり)/レーシングミディアム |
予選スーパーラップで注目を集めたのは、ルーキーの#01 鈴木選手(EVANGELON e-RACING with 広島マツダ)。
JEGTデビュー戦の開幕戦、最初のセッションとなる予選スーパーラップで最初の出走という緊張する場面で1:58.737を叩き出し鮮烈のデビューを飾った。
各チーム#01鈴木選手のタイムに届かないなか、5番手でアタックした#54 坪井選手(TC CORSE Esports MAZDA)が魅せる。
セクター1、2で全体ベストを連続更新、トップタイムの更新を期待させる走りを展開。
タイムは1:58.741とわずかにトップ#01 鈴木選手に届かなかったものの、その差はわずか1000分の4秒という見事な結果を残した。
予選スーパーラップの結果、衝撃のデビュー戦となった#01 鈴木選手がトップタイム。
#54 坪井選手が惜しくも2番手、3番手に#105 鍋谷(TC CORSE SPK e-SPORT Racing)が続いた。
最初の出走でトップタイムを出した#01 鈴木選手が際立ったものの、全体をみればタイム差は全車1秒以内。
トップリーグの高いレベルを改めて証明する結果となった。
なお、#55 古畑選手(ARTA)と#12 植野選手(KOSHIDO RACING)はコースリミット違反のため、予選後の審議によりノータイムとなった。
Pos | Num | Team | Driver | Time | Gap |
PP | #01 | EVANGELION e-RACING with 広島マツダ | 鈴木 聖弥 | 1:58.737 | – |
2nd | #54 | TC CORSE Esports MAZDA | 坪井 俊介 | 1:58.741 | +0.004 |
3rd | #105 | TC CORSE SPK e-SPORT Racing | 鍋谷 奏輝 | 1:58.797 | +0.060 |
4th | #888 | Sengoku Gaming | 川上 奏 | 1:58.939 | +0.202 |
5th | #127 | eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS | 瀬田 凛 | 1:59.149 | +0.412 |
6th | #777 | D’station Racing | 高橋 拓也 | 1:59.257 | +0.520 |
7th | #11 | KOSHIDO Jr.RACING | 北村 拓也 | 1:59.333 | +0.596 |
8th | #35 | NISSAN × TRUST RACING | 池内 比悠 | 1:59.631 | +0.894 |
9th | #55 | ARTA | 古畑 貴彬 | No Time | – |
10th | #12 | KOSHIDO RACING | 植野 冬夷 | No Time | – |
見事な予選スーパーラップでポールポジションを獲得した#01 EVANGELON e-RACING with 広島マツダの決勝ヒート1を担当するドライバーは、昨年個人戦(インディビジュアルマッチ)で総合優勝を獲得した山中選手。
惜しくも2番手スタートとなった#54 TC CORSE SPK e-SPORT Racingは、三宅選手で巻き返しを図る。
レースはローリングスタート方式ということもあり、全車トラブルなくスタート。
トップでスタートした#01 山中選手は、レース巧者の前評判通りスタート直後から後続との差を徐々に広げ始める。
一方で、2位争いは4番手スタートの#888 奥本選手(Sengoku Gaming)までの3台がオープニングラップから連なる混戦模様。
さらに2ラップ目に入り、#127 古屋選手(eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS)が2番手グループに接近し、熾烈な2番手、3番手争いに注目が集まった。
とくに激しい争いを繰り広げたのが3番手#105 深谷選手(TC CORSE SPK e-SPORT Racing)と4番手#888 奥本選手だ。
コーナー立ち上がりで有利なポルシェ911を操る#888 奥本選手が再三スリップストリームに入って仕掛けるものの、ストレートの伸びで勝るRX-VISIONの#105 深谷選手がポジションをキープするという展開。
そして迎えた4ラップ目、1コーナーでついに均衡が破られる。
ストレートでスリップストリームに入った#888 奥本選手が、1コーナー飛び込みで#105 深谷選手のインをついてサイドバイサイドに持ち込んだ。
なんとかポジションキープをしようとした#105 深谷選手は、左タイヤをグラベルに落としスピン。
#888 奥本選手が3番手、後続の#127 古屋選手が4番手とそれぞれポジションアップし、#105 深谷選手は大きく順位を落とした。
レース結果は、オープニングラップから後続を引き離した#01 山中選手(EVANGELON e-RACING with 広島マツダ)がトップチェッカー。
2番手は#54三宅選手(TC CORSE SPK e-SPORT Racing)、3番手に#888 奥本選手(Sengoku Gaming)、4番手に#127 古屋選手(eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS)が続いた。
Pos | Num | Team | Driver | Time | Gap |
1st | #01 | EVANGELION e-RACING with 広島マツダ | 山中 智瑛 | 10:02.929 | – |
2nd | #54 | TC CORSE Esports MAZDA | 三宅 陽大 | 10:07.168 | +4.239 |
3rd | #888 | Sengoku Gaming | 奥本 博志 | 10:07.377 | +4.448 |
4th | #127 | eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS | 古屋 公暉 | 10:08.592 | +5.663 |
5th | #777 | D’station Racing | 野島 俊哉 | 10:09.279 | +6.350 |
6th | #11 | KOSHIDO Jr.RACING | 今井 慶春 | 10:13.302 | +10.373 |
7th | #105 | TC CORSE SPK e-SPORT Racing | 深谷 諄 | 10:14.376 | +11.447 |
8th | #55 | ARTA | 滝田 歩夢 | 10:14.588 | +11.659 |
9th | #35 | NISSAN × TRUST RACING | 五木 隆太郎 | 10:16.089 | +13.160 |
10th | #12 | KOSHIDO RACING | ⿊畑 蓉 | 10:18.362 | +15.433 |
決勝ヒート2は、大きなポジション変動はないものの、各ポジションで激しい争いが繰り広げられるトップリーグらしい見応えある展開となった。
最終順位を決定する決勝ヒート2は、トップでバトンを繋いだ#01 EVANGELON e-RACING with 広島マツダが世界トップクラスの速さを誇る宮園選手を起用という盤石の体制。
一方で、決勝ヒート1でポジションアップを決め、さらにファイナルラップでファステストラップを叩き出して2位に肉薄したポルシェ911の#888 今村選手(Sengoku Gaming)にも注目が集まる。
オープニングラップでまず魅せたのは#888 今村選手。
2番手をいく#54三宅選手(TC CORSE SPK e-SPORT Racing)に対して、バックストレートから130Rにかけてスリップストリームに入ると、最終シケインでインに飛び込みオーバーテイク。
見事2番手にポジションアップを決めた。
2ラップ目で注目を集めたのは、予選ノータイムで決勝に臨んだ#55 ARTA。
アグレッシブな走りでポジションアップを狙う#55 杉守選手は、デグナーで前をいく#11 佐久間選手(KOSHIDO Jr.RACING)のスリップストリームに入ると、ヘアピンでアウト側から並び立ち上がりでオーバーテイクを決めた。
そのほかにも、3ラップ目での#777 森本選手(D’station Racing)が3番手#127 堤口選手(eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS)を、8ラップ目には#55 杉守選手が6番手#105 菅原選手(TC CORSE SPK e-SPORT Racing)をそれぞれオーバーテイク。
ファイナルラップまでテールトゥノーズで続いた2番手争いをはじめ、オーバーテイクに至らないバトルも含めて各ポジションで激しい順位争いが繰り広げられた。
レース結果は、1位#01 宮園選手(EVANGELON e-RACING with 広島マツダ)、2位はオープニングラップでオーバーテイクを決めた#888 今村選手(Sengoku Gaming)となった。
3位は猛プッシュもわずかな差で届かなかった#54三宅選手(TC CORSE SPK e-SPORT Racing)、4位は#777 森本選手(D’station Racing)。
なお、レース後審議で#12 長選手(KOSHIDO RACING)に「走路外使用による追い越し」のペナルティが課せられた。
Pos | Num | Team | Driver | Time | Gap | Point |
1st | #01 | EVANGELION e-RACING with 広島マツダ | 宮園 拓真 | 20:01.411 | – | 33 |
2nd | #888 | Sengoku Gaming | 今村 駿佑 | 20:05.055 | +3.644 | 22 |
3rd | #54 | TC CORSE Esports MAZDA | 佐々木 唯人 | 20:05.331 | +3.920 | 21 |
4th | #777 | D’station Racing | 森本 健太 | 20:06.344 | +5.233 | 13 |
5th | #127 | eM福岡 エンタテ!区 LEGENDS | 堤口 直斗 | 20:07.792 | +6.381 | 12 |
6th | #55 | ARTA | 杉守 翔平 | 20:09.793 | +8.382 | 8 |
7th | #105 | TC CORSE SPK e-SPORT Racing | 菅原 達也 | 20:10.723 | +9.312 | 6 |
8th | #35 | NISSAN × TRUST RACING | 小木田 恭悟 | 20:16.805 | +15.394 | 4 |
9th | #12 | KOSHIDO RACING | 長 和樹 | 20:19.535 | +18.124 | 2 |
10th | #11 | KOSHIDO Jr.RACING | 佐久間 俊一 | 20:26.553 | +25.142 | 1 |
トップリーグ開幕戦は、レース結果だけをみると前年優勝の実績通り#01 EVANGELON e-RACING with 広島マツダの完勝となった。
しかし、各セッションのレース展開にフォーカスすると、決して盤石の1強というわけではない。
予選スーパーラップは3位までが100分の6秒差という僅差で、決勝ヒート2を担当した#01 宮園選手が「必死でプッシュしました」とレース後に語っているように、序盤の2番手争いで広がったトップと2位との差はレース後半で縮まっている。
また、決勝ヒート1、ヒート2ともにトップチェッカー以外のチームがファステストラップを記録するなど、レース中のタイムも各チームほとんど差がなくリーグ全体のレベルが上がっていることを実感できるレースとなった。
注目のシリーズ第2戦は、2022年12月3日(土)開催予定。
開幕戦勝利を飾った#01 EVANGELON e-RACING with 広島マツダが勝利を重ねるのか、はたまた各チームの逆襲はあるのか、開幕戦以上の手に汗握るバトルに期待したい。
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