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ニュースグランツーリスモ7の設定にもある、TCSとASM(ESC)。
クルマにあまり興味のない方だとあまり馴染みはないかも知れないが、一般車にも採用される安定走行に欠かせない装備だ。
特にグランツーリスモ初心者の方は、より楽しく走るために働きをぜひ理解しておいてほしい。
レースカーのみならず一般車にも装備される、TCSとASM(ESC)について詳しく解説しよう。
TCSとは、「トラクションコントロールシステム(Traction Control System)」の頭文字をとったエンジン出力を自動制御する装置。
一方で、ESCは「エレクトリックスタビリティコントロール(Electronic Stability Control)」の頭文字で、日本語では横滑り防止装置と呼ばれる。
いずれも、クルマの安定性を自動的に維持する装置で、レーシングカーのみならず一般車への導入も進んでいる電子デバイスだ。
まずは、TCSとESCについて詳しく紹介しよう。
クルマの姿勢を乱しやすい濡れた路面やコーナリング時に、TCSやESCは人間の操作では追いつかない繊細な制御を自動で行ってくれる。
また、人間は操作ミスをするものなので、運転の安全性をより高めてくれる点もTCSとESCの大きなメリットだ。
一方、極限状態で走行するレースでも、TCSは欠かせない装置になりつつある。
マシン性能が向上してレーススピードが上がると、プロドライバーといえども操作が追いつかなくなってきているためだ。
特にコーナリング時にタイヤが空転すると、クルマの挙動が乱れてスピンにつながってしまう。
一方で、タイヤがどの程度のパワーで限界を超えるかという判断は難しく、特に高速で走行するレースでは繊細なアクセルコントロールが求められる。
そこで、タイヤのグリップ状況に応じた出力制御を行う装置として、TCSが開発された。
TCSは、人間の代わりにアクセルコントロールをしてくれる装置だと考えると理解しやすい。
例えば、停止状態からアクセルをいきなり踏み込むと、駆動輪が空転してしまう。
しかし、TCSがあれば、タイヤが空転しないように自動的にエンジン出力を制御してくれる。
また、コーナリング時はタイヤのグリップが横方向にも使われるため、乱暴にアクセルを開けると簡単に限界を超えてしまう。
TCSによってタイヤのグリップ力に応じたエンジン出力に調整することで、最適な加速力を得られる。
ESCは、アンダーステアやオーバーステアといったコーナリング中にクルマが不安定な状態になると、安定させる方向にすべてのタイヤを制御する技術。
技術としては、TCSとABS(アンチロックブレーキシステム)を総合的に制御することで横滑りの防止を実現している。
例えば、オーバーステア(クルマが曲がりすぎる状態)であれば、駆動輪の空転を防ぎ、後輪側にブレーキをかけるなどオーバーステアを打ち消す方向に制御するといった具合だ。
なお、ESCはクルマの安全性を高める装置として、普通車は2012年、軽自動車は2018年以降のクルマに取り付けが義務化されている。
一般道ではなくサーキットをレーススピードで走るグランツーリスモでは、TCSやASM(ESC)は状況によって使い分けることが必要。
グランツーリスモ7での、TCS、ASMそれぞれの働きを詳しくみてみよう。
グランツーリスモ7でのTCSは、オフも含めて合計6段階に調整できる。
TCSはレース中にも変更できるため、状況に応じて随時使い分けてほしい。
特に細かいアクセルコントロールがまだ苦手な初心者ドライバーの場合は、TCSレベルを最大の5に設定すると走りやすくなるはずだ。
一方で、グランツーリスモに関しては、究極的にはTCSはないほうが速い場合もある。
TCSはエンジン出力を抑制する方向で働くため、場面によってはパワーを十分に得られない。
タイヤのグリップを使い切れるのであれば、TCSオフのほうがエンジン出力に制限がかからない分コーナリング時に鋭く立ち上がれる。
実際JEGTのトップドライバーをみると、レース中はTCSをオフにしている選手がほとんど。
繊細なアクセルワークのできるトップドライバーにとって、コーナリングの立ち上がりが鈍くなるTCSはタイムが落ちる要因になるためだろう。
一方で、グリッドスタート時には、発進時の空転によるロスを最小限に留めるためにTCSをオンにしていることもある。
また、雨中のレースなどでは有効なこともあるので、TCSは状況に応じての使い分けを意識しよう。
一般的にスタビリティコントロールと呼ばれる横滑り防止装置は、グランツーリスモ7では「アクティブスタビリティマネジメント(ASM)」と呼ばれている。
オーバーステアやアンダーステアなどクルマが不安定な状態に陥ると、4輪のブレーキが個別に自動で働いて姿勢を制御してくれる。
グランツーリスモ初心者が最初にぶつかる壁は、コーナリングがうまくできなくてコースを周回することすらできないことだ。
周回できなければいつまでたってもコースを覚えられないし、何よりゲームとして楽しくない。
ハンドル操作やブレーキ操作に集中するためにも、無理せずASMをオンにして練習を重ねることをおすすめする。
ただし、デイリーレースや大会などでは使用が禁止されていることもあるので、最終的にはASMオフで走ることを目指そう。
TCSやASM(ESC)といった電子デバイスは、クルマを安定して走らせるために有効なデバイスだ。
しかし、電子デバイスは万能ではないので、制御能力の限界を超えるとクルマは姿勢を乱してしまう。
電子デバイスの恩恵を得つつ、あくまでもドライバー自身がクルマをコントロールする意識が大切だ。
一方で、グランツーリスモだけでなく、実車でのサーキット練習時にも電子デバイスは有効に使える。
最終的にオフにするかどうかは意見のわかれるところだが、TCSやASM(ESC)の作動状況を見ながら走ることで、自分の弱点に気がつけるからだ。
例えば、コーナリングの立ち上がりで常にTCSが作動しているということは、タイヤのグリップ力に対してアクセルを踏みすぎているということがわかる。
特に初心者でまだ思い通りに走れない場合は、一度全ての電子デバイスをオンにした状態で走ってみよう。
コースを無理なく周回できるようになって、グランツーリスモをより楽しめるようになるはずだ。
Text: 渡邉 篤
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