NEWS
ニュース戦闘機のような見た目でカッコいいエアロパーツは、実車のカスタマイズで人気のパーツだ。
しかし、エアロパーツには、もっと重要な役割があることをご存じだろうか。
高い走行性能を実現するために欠かせない、“ダウンフォース”を生み出すことだ。
ダウンフォースの変化は装着するパーツによっては公道でも感じられるほどなので、レースでの重要性は言うまでもない。
ダウンフォースがなぜクルマにとって重要なのか、グランツーリスモ7でどうやって調整するのかをクルマやグランツーリスモの初心者でもわかりやすく解説しよう。
エンジンやサスペンションの性能と同様に、より速くクルマを走らせるために大きな影響を与えるのが空気の流れだ。
“ダウンフォース”と呼ばれる空気の力が、コーナリング特性や安定性といったクルマの基本的な性能に大きく影響する。
空気の流れがなぜ走行性能に影響を与えるのか、“ダウンフォース”にはどのような効果があるのか詳しくみてみよう。
クルマが加速すると、わずかながら車体が浮き上がる。
詳しい説明は難解になるので省略するが、クルマが走行する際に車体表面を流れる空気によって浮く力“揚力(ヨウリョク)”が生まれるためだ。
もともと、飛ぶための形状をしている飛行機と同一視はできないが、離陸時に滑走路で徐々に機体が浮き上がっていくことをイメージしてもらえれば想像しやすいだろう。
しかし、クルマにとっては、浮き上がることはデメリットにしかならない。
タイヤにかかる荷重が減少するため、駆動輪のトラクション、コーナリング時の前輪のグリップが悪化してしまううえ、クルマ全体としての安定性も損なわれる。
浮き上がるクルマを地面に押さえつけるには、エアロパーツと呼ばれる空力特性に影響するパーツが不可欠だ。
エアロパーツによって揚力とは逆の向きに力がかかるよう空気の流れをコントロールし、クルマを地面に押し付ける力「ダウンフォース」を発生させる。
ダウンフォースが持つ最大のメリットは、トラクションと安定性の向上だ。
下向きの力でタイヤを地面にしっかりと密着させることで、エンジンパワーを余すことなく路面に伝えられる。
また、コーナリング性能にもダウンフォースの影響は大きい。
前輪が浮き上がらなければ、ステアリング操作がタイヤを通じて路面に的確に伝わるためだ。
さらに、車体が浮き上がらなくなれば挙動を乱しにくくなり、トラクションやコーナリング性能と合わせてクルマとしての安定性が向上する。
ダウンフォースによって安定性やトラクション、コーナリング性能が向上する反面、空気抵抗(ドラッグ)が増加する。
つまり、加速に必要なトラクション以上のダウンフォースを受けてしまうと、加速性能や最高速度に加えて燃費にも悪影響を及ぼしかねない。
実車で公道を走る速度域であれば、ダウンフォースを増やすことは単純に安定性の向上につながるケースも多い。
しかし、レースやサーキットでのスポーツ走行をする場合は、全体のバランスを考えてダウンフォース量を調整する必要がある。
グランツーリスモ7でダウンフォースを調整する際は、ガレージやレース、タイムアタックなどさまざまな画面から入れる“カーセッティング”内でおこなう。
ダウンフォース量として表示されている数値は車種によって異なるが、基本的には前後バランスで整えるので数値そのものをあまり意識する必要はない。
グランツーリスモ7で、ダウンフォースを調整する際のコツを詳しく解説する。
また、ロードカーなどでは項目がグレーアウトしている場合もあるので、対応方法もあわせて紹介しよう。
さらに、ダウンフォース同様にコーナリング特性に影響する“バラスト”についても紹介しているので、ぜひ参考にしてほしい。
ロードカーのなかには、空力パーツが装着されていない場合や調整できない車種もある。
空力調整をするには、“GTオート”内のメニュ、“カーカスタマイズ”でオプションパーツの装着が必要だ。
また、前後ともに調整したい場合は、フロントとリアそれぞれにエアロパーツを装着しよう。
形状については特性には関係ないので、好みのパーツを選んで問題ない。
グランツーリスモ7でダウンフォースの調整は、“カーセッティング”メニューの一覧からおこなう。
ダンフォース量は前後それぞれに調整できるので、安定性やコーナリング性能、加速感や最高速を確認しながら最適なバランスを目指して調整しよう。
調整をする際は前後同時に数値を動かすのではなく、フロントとリアどちらか一方からの調整をおすすめしたい。
前後を同時に調整すると、挙動の変化がどちらの影響でおこっているかが分かりにくくなるためだ。
基本的に、フロント側のダウンフォース量を増やすとコーナリング時の回頭性が良くなって、いわゆるノーズが入りやすい状態になる。
一方、路面に伝わるトラクションの増加と安定性の向上を目指したい場合は、リアのダウンフォース量を増やそう。
大まかに目指すフィーリングに近づいたら、前後の数値を細かく調整して理想のバランスに整える。
空力と同様にクルマのバランスを整える方法として、バラストの搭載位置の調整も有効だ。
バラストとは“重り”のことで、グランツーリスモ7では重量と搭載位置をそれぞれ調整できる。
クルマの理想的な前後重量配分は50:50と言われるが、ノーマル状態で実現している車種はほとんどない。
挙動を見極めながらバラストの調整をして理想的な重量配分に近づけると、コントロール性の向上が見込める。
ただし、バラストを搭載すると当然車重が重くなるので、加速や最高速、制動距離など不利になる面もあるので注意したい。
闇雲にバラストを積むのではなく、コントロール性と運動性能の最適なバランスを見極めることも重要だ。
ダウンフォース量もバラストによる前後重量バランスも、理想とされる数値はある。
しかし、もっとも重要なポイントは、ドライバー自身がコントロールしやすいバランスにクルマを仕上げることだ。
実車とは異なり、ロードカーでもエアロパーツを取り替えることなく手軽にダウンフォースが調整できるのはグランツーリスモ7ならではのメリットだろう。
時間の許す限り試行錯誤しながら、理想のコーナリング特性と最高速を追求してみてほしい。
Text: 渡邉 篤
■グランツーリスモ初心者のためのターボ講座! 過給器全般の仕組みからセッティングのポイントまで詳しく解説