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ニュースグランツーリスモ7でカスタマイズできる項目のなかでも、やや難しいのがギア比の調整。
しかし、コースに合ったギア比を見つけると、ドライビングテクニックが一定でもタイムが向上することもある。
ギアの基本的な仕組みについて具体例を挙げながら解説しつつ、エンジンとギアとの関係も併せてご紹介しよう。
どれだけハイパワーのエンジンを搭載していても、ギアがないとクルマは発進させることすらできない。
クルマにとって、ギアはどんな働きをしているのかまずは詳しく解説しよう。
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クルマに使用されるギアの役割は、エンジンの力を何倍にも増幅することだ。
細かい説明は省略するが、重量のあるクルマを動かすには莫大なエネルギーが必要なため、エンジンの回転力をそのまま車輪に伝えても残念ながらクルマは動かない。
そこで、ギアの入った装置で力を増幅する必要がある。
たとえば、エンジンについたギアの歯の数が10枚、車輪側は100枚だとしよう。
エンジンが10回転する間にようやく車輪側は1回転する。
回転数が10分の1になる一方、入力される力は一定のため、車輪側の出力は10倍になる計算だ。
変速機付きの自転車で坂道を登る場面を想像すると、理解しやすいのではないだろうか。
1番低いギアに落とすと、ペダルを漕ぐ回数に比べて自転車が進まない一方、ペダルを漕ぐ力自体は軽くなる。
自転車の場合の“ペダルを漕ぐ足”がクルマではエンジンに当たるので、エンジン出力とギアの関係性を直感的に理解できるはずだ。
ギア比の数値は、エンジンからの入力回転数を1とした場合、最終的な回転数が何分の1になるかという減速比率になっている。
逆に考えると、エンジンの力を何倍に増幅するかという数値だ。
入力を減速する比率がギア比のため、“減速比”と呼ぶこともある。
一般的なクルマをはじめ、レーシングカーなどでは、エンジンの力を車輪に伝達するギアは複数のギア比のものが組み合わされたトランスミッションというユニットに封入されている。
「○速」といった形でシフトチェンジをする行為は、速度に応じてギア比を変更しているのだ。
エンジンは低回転から高回転まで同じ特性で回るわけではない。
一般的に、低回転ではトルク、パワーともに低く、中高回転で最大値が出現するような特性になっている。
トルク、パワーともにピークを迎える回転数を“パワーバンド”といい、エンジンのもっともおいしい部分だ。
アイドリングからの発進に使用する1速はともかくとして、シフトアップした際に、できるだけパワーバンドに入るように各シフトのギア比は決められている。
たとえば、5,000〜8,000回転にかけてがパワーバンドの場合、8,000回転まで回してシフトアップした先のギア比が、前のギアの半分だと4,000回転まで回転数が落ち込んでしまう。
最適なギア比は、シフトアップ前のギア比の0.625倍(5,000÷8,000)となる。
グランツーリスモ7では、“カーセッティング”画面でギア比の調整ができる。
いきなり各シフトごとのギア比を直接変更することが難しい場合は、まずは“最高速(オート)”の数値を調整して特性の違いを体験してみてほしい。
グランツーリスモ7でギア比を調整する際の考え方を、ポイントを絞って解説しよう。
なお、紹介している調整をおこなえるのは、“フルカスタマイズミッション”か“フルカスタマイズシーケンシャルミッション”を搭載している場合のみなので注意してほしい。
>>シフトチェンジによるタイムラグを防ぎたいターボの仕組みについてはこちら
サーキットによって直線長が異なるため、マシンが同じでも最高速度は変わってくる。
まずは、コースの最高速度に合わせよう。
最高速度に合わせる際は、カーセッティング画面の“最高速(オート)”が便利だ。
速度を調節すると、各ギアのギア比が自動的に調整される。
最高速(オート)の値を変更しながら、直線などのもっとも速度の出るポイントで、できるだけ最高速が高くなるよう調整しよう。
なお、ギア比の調整がわかりにくい場合は、あらかじめ低回転用と高回転用にギア比が調整されたトランスミッションが車種によっては用意されている。
それぞれで走り比べてみて、ギア比の違いによる特性の違いを理解するのもおすすめだ。
よりコースに合ったギア比に仕上げるには、テクニカルセクションで効率よくエンジンパワーが使えるように調整することも重要だ。
コーナーをつなぐ区間でエンジンが吹け切ってしまうが、シフトアップしてもすぐにブレーキングをする場合などでギア比の調整が有効になる。
この場合の考え方は2つで、1つは吹け切らないようにギア比を低く落とすこと。
もう1つは、短い区間でシフトアップしても十分加速できるよう、高めのギア比で早めのシフトアップをするセッティングだ。
どちらの方向で調整するかは、コースによって異なるため試行錯誤をしてできるだけエンジンのおいしい部分を使えるセッティングを目指してほしい。
また、できるだけシフトチェンジの回数が少なくなるように調整すると、より速いタイムが出せるようになる。
シフトチェンジをすると、一瞬だが駆動力が途切れるためだ。
さらに、ターボ車ではシフトチェンジ後に再びブーストがかかるまで少し時間がかかるので、タイムに与える影響は大きい。
ファイナルギアと呼ばれるギアは、トランスミッションの出力側に装着された最後のギアだ。
エンジンからの入力を、トランスミッション内の各ギアで減速したあと、最終的にファイナルギアを介して車輪に伝達される。
ファイナルギアのギア比は、特別に“ファイナルレシオ”“最終減速比”と呼ばれ、クルマの乗り味に影響する重要なポイントだ。
ファイナルレシオが小さいと、比較的高速志向で高回転を回し続けて乗るイメージ、一方で大きくすると比較的中回転域からの使いやすさを重視したセッティングとなる。
ファイナルギアについては、ドライバーが求める乗り味もあるが、エンジン特性に応じたセッティングをしよう。
グランツーリスモ7でギア比を調整する際は、カーセッティング画面を開くだけいい。
しかも、カーセッティング画面は、ガレージ以外にも各レース画面から簡単にアクセスできる。
しかし、実車でギア比の変更をおこなう場合は、かなり大掛かりな作業が必要だ。
車体からトランスミッションをおろして分解したうえで、必要なギアの交換をおこなう。
レーシングカーなどでは、ギア比を変えたトランスミッションを複数用意していることもあるが、それでもトランスミッション自体を交換する必要があり、ギア比の変更は大変な作業だ。
最適なギア比を見つけるのは、調整自体が簡単なグランツーリスモでも難しいセッティングの1つ。
プロドライバーでも試行錯誤をしているので、ぜひ粘り強く最適なギア比を見つけてほしい。
また、セッティング不可のレースでも、ギアの仕組みがわかっていれば最適なシフトタイミングがわかりやすくなるはずだ。
Text: 渡邉 篤
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