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ニュースFFとは思えないクイックなハンドリングと、パワフルな加速。
シビック タイプRは、インテグラ タイプRと並んで日本を代表するFFスポーツカーだ。
なかでも、グランツーリスモ7にも収録されているFK8型は、最新型ではないもののホンダのこだわりが詰まった完成度の高いマシンに仕上がっている。
発売当時FF最速の称号を獲得したFK8型シビック タイプRの全貌を紹介しよう。
FK8型シビック タイプRは、通年モデルとしては実に7年ぶりの“TYPE R”としてリリースされた。(限定モデルとしては2015年にFK2型を販売)
FF最速を目指して開発されたFK8は、先代よりもパワーアップしたエンジンはもちろん、足回りや内外装、細部にいたるまでとことんこだわって開発。
しかも、久しぶりのタイプRというだけではなく、実はFK8はシビック史上初の試みも盛り込まれている。
シビック タイプRの歴史とともに、FK8の概要を紹介しよう。
そもそもタイプRとは、ホンダの一部スポーツモデルだけに設定された最上位グレードで、ホンダ スポーツカーの象徴的な存在だ。
ベース車両とは異なりチューニングされたエンジン、足回りやブレーキ、内外装にいたるまでタイプR専用に開発されている。
シビック タイプRは、「NSX」「インテグラ」に続くシリーズ第3弾として、1997年にEK型シビックに初めて設定された。
その後、シビック タイプRはシビックの各世代で設定され、現在の最新型は6代目のFL5型だ。
これまでのシビック タイプRは、あくまでもベース車両をチューニングする形で投入されてきた。
しかし、FK8型シビック タイプRは、開発段階から“TYPE R”を見据えて設計されている。
足回りやエアロパーツの追加のみで走行性能を強化するのではなく、シャシーやボディ形状すべてに於いて最強のFFマシンを目指して開発された。
たとえば、プラットフォームの改善によってFFの弱点の改善も図られている。
エンジンとドライブトレインに加え、ステアリングまで含めてすべての走行メカニズムがフロントに集中するFFは、どうしてもフロントヘビーになってしまう。
しかし、理想のFFスポーツカーを目指したFK8では、プラットフォームの改善で重量配分を2.5%後方に移動することに成功。
わずか2.5%ではあるが、タイプRの名にふさわしく理想を妥協なく追い求めた。
FK8型シビック タイプRに搭載されるエンジンは、先代FK2型と同型のK20C型2L直列4気筒直噴ターボエンジン。
しかし、エンジン制御の改善によって最高出力は320psに引き上げられた。
足回りは、フロントに「デュアルアクシス・ストラット・サスペンション」と呼ばれる新開発サスペンションを採用、リアもマルチリンク式サスペンションに変更されている。
市販車テストの定番コースであるニュルブルクリンクにおいて、当時のFF市販車最速はフォルクスワーゲン ゴルフGTIクラブスポーツSだったが、FK8型シビック タイプRがタイムを3秒以上も大幅に更新する7分43秒80を記録し、世界最速FF市販車の座を奪還した。
そして、2019年におこなわれたニュルブルクリンクの公式ルール改正後、ルノー メガーヌR.S.トロフィーRが7分45秒389を記録。
実質的にNo.1の座を明け渡すことになるが、市販車としては現行型のFL5型タイプRが7分44秒881を記録し再びNo.1に返り咲いている。
2023年5月の時点では、グランツーリスモ7にFL5型のタイプRは収録されていないが、収録されるのもそう遠くないはずだ。
グランツーリスモ7に収録されるFK8型シビック タイプRは、2020年に登場した特別仕様車“Limited Edition”
基本性能は通常のFK8と大きく変わらないものの、フロントの形状変更によって冷却性能とダウンフォースの向上、ブレーキとホイールの見直しでバネ下荷重の低減が図られている。
FFながらレースでFRと張り合える高い戦闘力をもったシビック タイプR。
グランツーリスモ7に登場するほかのシビック タイプRと、FK8の走行インプレッションを紹介しよう。
グランツーリスモ7に収録されるシビック TYPE Rは、「EK9」「FK2」「FK8」の3種。
中古車価格が高騰して実車の入手が困難になっているEK9に手軽に乗ることができるのは、eモータースポーツならではの体験だ。
性能だけで比較すると、もちろん最新のFK8がもっとも優れているが、それぞれのシビック タイプRを乗り比べることで進化を感じることができるだろう。
グランツーリスモ7でFK8型シビック タイプRをドライブすると、最初に驚くのが回頭性の良さだ。
コーナーでハンドルを切り込むと、フロントノーズがぐいぐいと内側に入り込んでいく。
FRと比べるとアンダーステア傾向ではあるため、進入時にフロント荷重になるように気をつかう必要はあるものの、一旦荷重移動をしてしまえばスムーズにクルマの向きが変わる。
そして、FFのメリットを最大限活かすことができるのがコーナー進入後だ。
イン側にしっかり切り込めるので、FRよりも早くアクセルを全開にしてコーナーを脱出できる。
グランツーリスモ初心者にとって、FFマシンは扱いやすい。
とくにFFのなかでは回頭性のいいFK8なら、FRで走るよりもタイムを縮められる場面は多そうだ。
そして、FK8はFFながらグランツーリスモ上級者にもおすすめしたい。
荷重コントロールさえうまくおこなってフロントにトラクションをかけられる姿勢を作れば、コーナーによってはFRよりも気持ちよく立ち上がることができる。
FFという駆動方式がスポーツ走行に不利という点は、高い走行性能を誇るFK8型シビック タイプRであっても変わらない。
しかし、FK8には単純な“速さ”だけではない魅力が詰まっている。
走行安定性が高いので、多少ミスをしてもアクセル操作とステアリング操作で取り戻せる。
しかも、FFにしては回頭性がいいので、ピーキーなFRマシンよりも走ること自体を楽しめるのだ。
アクセルオフでイン側につき、アクセルオンでアウトいっぱいにコーナーを立ち上がる。
思うがままに気持ちよく、FK8型シビック タイプRで世界のコースを走ってみて欲しい。
Text: 渡邉 篤
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