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ニュースJEGT2022シリーズトップリーグは、東京オートサロン2023で開催されたRd.3において#888 Sengoku Gamingがシリーズチャンピオンに輝いた。
一方、波乱の展開となった2位以下の各チームは、表では見られないその裏で綿密なピット戦略を繰り広げていたのである。
今回は、特徴的な作戦を展開した3チームに絞り、チームの生の声をお届けしたい。
各チームの狙いや実際のレースでのギャップなど、ピット戦略について詳しく聞ける機会はあまりないだけに貴重な内容となっている。
今回ピット戦略について詳しく聞いたのは、#54 TC CORSE Esports MAZDA、#55 ARTA、#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDSの3チーム。
それぞれに思惑が違うピット戦略をなぜ立案したのかという点にフォーカスしながら、チームごとにポイントを絞って詳しく紹介したい。
>>タイヤの選び方やピット戦略について詳しく知りたい方はこちら
今回3チームのピット戦略に注目した理由は、すべて異なるピット戦略だったためだ。
しかも、レース前に置かれた状況もチームによって違い、ピット戦略を立てる際の狙いも異なることが予想される。
実際、狙いや実際の結果の分析内容は、チームごとにすべて違うものだった。
各チームのピット戦略は、こちらから送付したアンケートに回答をもらう形で聞いた。
記事中ではすべての質問を記載できないため、送付したアンケート内容を先に紹介しておこう。
Q1.戦前のピット戦略はどういった作戦でしたか?
Q2.実際のレースではどうなりましたか?
Q3.今回の戦略の狙いを教えてください。
Q4.(戦略に変更があった場合)なぜ変更しましたか?
Q5.結果的に戦略は狙い通りになりましたか?
Q6.うまくいった点と成功したポイントを教えてください。
Q7.うまくいかなかった点とその理由を教えてください。
Q8.レースを振り返って「こうしておけばよかった」と思うピット戦略があれば教えてください。
各チームからの回答をもとに、ピット戦略の狙いと成否を紐解いていく。
#54 TC CORSE Esports MAZDAは、予選4番手からのスタートながら終盤で驚異的な追い上げをみせ、コース上2番手でチェッカーを受けた。(レース結果はペナルティにより3位)
しかし、実はアクシデントによって当初の予定通りのピット戦略とはならなかったことが判明。
もともとの戦略となぜ変更になったのかに注目してご覧いただきたい。
【レース前】
1スティント目: ハード 6周
2スティント目: ソフト 8〜9周
3スティント目: ミディアム 9〜10周
【実際】
1スティント目: ハード 6周
2スティント目: ミディアム 9周
3スティント目: ソフト 9周
当初の戦略と変更になった理由について、「1回目のピット時のボタン操作ミスにより急遽変更になりました」とアクシデントであったことを明かした。
ピット戦略の狙いについて、「先頭集団はソフトやミディアムでスタートをすると予想していました。RX-VISION GT3は、ダウンフォースが少なくなるとタイムロスが大きいため、バトルを避けて、一人で走れる環境を作ることに注力しました」とコメント。
ピット戦略をたてる際は、クルマの特性も重要なポイントだということが分かる。
さらに、「中盤は各チームがレースペースを重視し、オーバーテイクが成功しやすい傾向にあるのでソフトで追い上げる狙いだった」と当初の戦略では、他チームの動向も強く意識していたことをうかがわせた。
「上位チームがハードタイヤのときにソフトタイヤを使用でき、オーバーテイクが成功した」と、脅威の追い上げの要因を分析。
また、「自分の担当以外のタイヤも練習していたので、どうにか対応できた」とし、ドライバーの練習量も結果につながったことを明かす。
一方で、「最初に予定していた戦略を試してみたかった」と操作ミスによる戦略変更を悔やんだ。
予選スーパーラップで2番手のポジションを獲得していた#55 ARTAは、上位につけるチームの中で唯一のミディアムスタートを選択。
ライバルチームと異なるタイヤを選択することで順位をあげる戦略かに思われたが、結果的には狙いを外す結果となってしまった。
#55 ARTAがとったピット戦略の本当の狙いについて確認してみよう。
【レース前/ 実際】
1スティント目:ミディアム 9周
2スティント目:ソフト9周
3スティント目:ハード6周
タイヤの使用順、交換タイミングともに当初の戦略通りだった。
結果的に全チーム中、唯一のミディアムスタートとなったが、実は「3位以下もミディアムスタートと想定していた」ため選択したとのこと。
しかし、「意外と下位のチームがソフトタイヤでスタートしたことで、狙いと大きく外れた」とほかチームの戦略を読みきれなかったことを明かした。
「全員大きなミスをしなかった」とレース運び自体には一定の評価をしたものの、「ソフトでのペース配分を失敗し、タイヤの良い部分を使い切れなかった」と悔しさをにじませるコメントを残した。
さらに、「スタートタイヤをソフトに変更し、ほかのチームに着いていく戦略に変更しておけばもう少し良い結果になった可能性もあった」とも振り返る。
ピット戦略の成否は、自チームだけではなく対戦相手の戦略にも大きく左右されることがわかる結果となった。
ドライバー交代を待つ荒木選手(手前)と交代エリアに向かう國分選手(奥)
#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDSは、レース前のポイントランキングで7位。
計算上はシリーズチャピオンの可能性も残っていた。
しかし、あくまでもチームのペースだけに注目してピット戦略を策定。
実際のレースではオフラインレースの難しさも影響することになった、#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDSのピット戦略を紹介しよう。
【レース前/ 実際】
1スティント目: ソフト 8周
2スティント目:ミディアム 10周
3スティント目: ハード 6周
#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDSは、チームが立てた戦略通りのタイミングでピット作業をおこなえたようだ。
今回のピット戦略を選択した理由を「一番速かったから」と回答。
「ほかのチームの影響は考慮せず、単走のタイムで決定した」とあくまでも、自チームがもっとも速く走れる戦略をとったことを明かしてくれた。
「ソフトのときにオーバーテイクできた」と実際に手応えもあったことを付け加える。
あえてほかのチームを考えず、自チームの力にフォーカスをすることもピット戦略を立てる1つの考え方だろう。
「タイヤ戦略は狙い通り」としながらも、「ピットの手順に誤りがあった。もっとルールをよく確認しておけばよかった」とレースを振り返る。
具体的には、「タイヤ選択等、ボタン操作のタイミング。座る前に押していいと知らなかったので大幅なタイムロスとなった」とのことで、ピット作業時に大きくタイムロスがあったことを明かした。
また、「トランシーバーが機能しなかったため、ピットからの指示が全く通らなかった」とアクシデントがあったことも少なからず影響したようだ。
#127 eM福岡 エンタテ!区 LEGENDSの回答をからは、不確定要素が多いオフラインレースの難しさを改めて知ることができた。
今回アンケートに答えてくれた3チームは、それぞれ違うピット戦略をとっていた。
しかも、ピット戦略を立てる際に考慮したポイントもそれぞれ異なる。
ほかのチームのタイヤ選択、クルマの特性、単独でのタイム、コースやバトルによるタイヤ摩耗などさまざまな角度から分析した結果立てられるピット戦略。
特にチーム戦でドライバー交代もあるオフラインレースでは、さまざまな要素や条件が複雑に絡みあう。
一方でドライバー1人でのピット戦略も瞬時の判断が求められるため、レースを観る上で見応えのあるポイントだ。
来シーズンJEGTを観戦する際は、ぜひ各チーム、各ドライバーのピット戦略にも注目してご覧いただきたい。
Text: 渡邉 篤
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