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ニュースJEGTトップリーグや世界大会を戦うトッププレイヤーたちを見ていると、いとも簡単に走っているように見える。
しかし、実際にグランツーリスモをプレイすれば、たった1つのコーナーをクリアすることすら簡単ではないと感じるだろう。
そこで今回は、トップドライバーがどういう視点でドライビングをしているのかについて、筆者のリプレイデータをみて走り方についてアドバイスをもらった。
グランツーリスモ歴1年未満の筆者でも、宮園選手からのアドバイスでタイムは向上するのか?
今回の企画に際し、当初は数週走った中で筆者の平均的なタイムが出たリプレイを宮園選手に送る予定だった。
アドバイスをもらった結果、大きくタイムアップしたほうが企画としてはインパクトがある。
しかし、走っているうちに期せずして好タイムを記録。
結果として、ただのタイム向上ではなくJEGT認定ドライバー基準タイムを目指すことにした。
JEGTでは認定ドライバー制度をとっており、毎年JDS(JEGT Driver’s Selection)というタイムアタック試験をおこなっている。
2022年度のJDSではインテルラゴスサーキットが使用され、認定の基準タイムは1:29.999(Sランクは1:29.599)。
認定基準は、5周のうち上位3周の平均タイムなのだが、まずは1ラップだけ基準タイムを出すことを目標とした。
ただし、実際のJDSとはプレイ環境と条件が異なるため、あくまでの参考タイムとなることをご了承いただきたい。
実際のJDSで使用するソフトはグランツーリスモSPORT、タイムアタック時のレギュレーションとして“BoPあり”となっている。
筆者のプレイ環境はPlayStation®5版のグランツーリスモ7のため、仕様上タイムアタックではBoPの適用ができない。
マシンとタイヤはJDSのレギュレーションに準拠。
マシンはJEGT2022シリーズトップリーグで宮園選手も乗る、マツダ RX-VISION GT3 CONCEPTをチョイスした。
タイヤはレーシングミディアム。
なお、ハンドルコントローラーは、自宅で使用しているJEGT公式ハンコンのLogicool G製「G923」だ。
12月某日、宮園選手に送るリプレイデータを作るために、タイムアタックを開始。
当初は、数週走ってそれなりにまとまったラップのデータを送る予定だった。
しかし、何度かトライしていると、ふと「せっかくトップドライバーにアドバイスをもらうのに、中途半端な記録でいいのか?」という思いが浮かんだ。
また、真剣にトライした結果でなければ、世界大会やJEGTシリーズRd.2と過密スケジュールを割いて対応してくれる宮園選手に対して失礼にあたる。
気がついたら、時間を忘れて夢中でタイムアタックを繰り返していた。
納得のいく走りができないまま、何度目のトライなのかわからなくなった頃、ついに1:30.917というベストタイムを記録。
しかし、その後は何度アタックしても、どんな走り方をしてもベストラップはおろかほとんどが1分31~32秒台で、1分31秒すら切れない。
1:30.917は、どうやら奇跡のラップタイムだったようだ。
しかし、1:29.999まであと1秒弱と迫るタイムが出たことで、JEGT認定基準タイムを目指さなければ企画として成立しない。
実力以上のタイムからさらに向上するのか不安もあったが、宮園選手のアドバイスでどう変わるかにも興味がありそのまま送ることにした。
宮園選手には、全体の印象や個別のコーナーへのアプローチ方法まで、細部に渡って丁寧な内容リプレイデータから気がついたポイントなどを文章で回答してもらった。
アドバイスを読んで早速タイムアタックをしたところ、あれだけ更新できなかったベストラップをたった数週であっさりとコンマ5秒も更新。
実際に隣でプレイを見てもらったわけではないのにも関わらず、リプレイデータだけで的確なアドバイスをしてくれた宮園選手の能力は流石だ。
コンマ5秒の短縮につながったポイントは、ドライビング全体へのアドバイスとしてもらった「縁石はコース内なので、しっかりと使えば中速コーナー以上のボトムスピードが伸びる」というもの。
コーナーによって縁石を使ってはいたものの、意識としてはコース内というよりも“あえて”縁石に乗せるという走り方。
考え方を変えて「縁石の外側の端までがコース内」という意識で走ったところ、これまでよりもアクセルを開けられる時間が長くなり、結果としてすぐにタイムが向上した。
全体の印象以外にも、特に攻略のポイントとなるコーナーに対して宮園選手からもらった細かなアドバイスを紹介しよう。
筆者のリプレイ動画を見たうえでのアドバイスではあるものの、ぜひインテルラゴス攻略の参考にして欲しい。
縁石を最大限使うライン取りを心がける。
早くインについてしまうロスよりもターンインが遅れることによる影響が大きいので、早めにイン側につくラインで走る。
ボトムスピードをできるだけ高く維持できるライン取りをする。
イン~ミドル進入を心がけると速度を維持しやすく、ターン12への加速につなげられる。
アウト側すぎると失速してしまうので注意。
アドバイス通りに走ることができるようになった結果、無事にJEGT認定基準タイムをクリア。
しかも、当初の1:30.917からは1秒以上も縮め、認定基準タイムも0.2秒以上上回る“1:29.786”を記録できた。
ただし、練習を始めてすぐにタイム更新できたわけではない。
宮園選手からもらったアドバイスの内容が問題ではなく、筆者の技術が足りないためだ。
頭ではわかっていても、微妙にライン取りが外れて思うように走れない。
そこで、速度を落としてライン取りだけを意識して何度か周回した。
速度を落とすことで、宮園選手に教わったラインを慌てることなくトレースすることができる。
余裕の持てる速度で何度か練習して、各コーナーのラインを明確にイメージできたら徐々に速度を上げていく。
全力でアタックを繰り返すこと2日、手応えを感じ始めたところでの達成となった。
アドバイス以前は、ほとんど1分31秒すら切れなかったが、1分30秒台前半を連発できるようになり明らかな変化を実感した。
ただし、JEGT認定基準をクリアしたのはたった1ラップだけで、実際の条件である「5周のうち3周の平均」という高い精度で記録するにはまだまだ練習が必要だ。
今回のチャレンジで、改めてJEGT認定ドライバー達の技術がどれだけ高いのかを感じた。
コメントに書かれていたことは、宮園選手にとっては当たり前だからこそわかりやすい内容だったのだが、何度走ってもなかなか思い通りには走れないのだ。
的確なアドバイスをもらってもこれだけ苦労をしたことを考えると、宮園選手を始めとする多くのJEGTドライバーたちは、トップであり続けるためにどれだけの練習をしているのだろうか。
JEGTのレースは当たり前のように走っているように見えるが、その裏にはたゆまぬ努力に裏付けられた確かな技術があることを再認識させられた。
また、たった1周のリプレイ動画を見ただけとは思えない、宮園選手の的確なアドバイスも驚くべきポイントだ。
次々と出てくる新しい選手と戦い続けることで、鋭い観察力が磨かれたのかもしれない。
JEGTでも、鈴木選手(#01 EVANGELON e-RACING with 広島マツダ)や赤羽選手(#55 ARTA)といったルーキーが結果を残している。
新人選手が台頭するなか、宮園選手が今後どう進化していくのか楽しみにしたい。
個人的にもグランツーリスモを楽しんでいる筆者にとって、今回は大変貴重な機会となった。
忙しいスケジュールのなか、細やかなアドバイスをくれた宮園選手に最大限の感謝をさせていただきたい。
Text: 渡邉 篤